彼女との距離感
「会うたびに、シケた顔してんなぁー。王子様とあろう方が!」

じゅうじゅうと音を立てているカルビを。

慣れた手つきで、焼いているマッチョな男。

祐太郎とは、高校1年の時からの付き合いだ。

20年以上も前のことだけど。

祐太郎との出会いは鮮明に覚えている。

席に座っていたら、いきなり祐太郎がやってきて。

「お前が、福王子真一郎か!」

と言ってジロジロと俺の顔を見て。

「俺が友達になってやるよ!」

と言って、握手した記憶がある。

あれから、ずっと仲良くしてるだなんて。想像もつかなかった。

高校を卒業してから、それぞれ別の大学だったし。

勿論、就職先だって別々だった。

でも、俺と祐太郎は2・3ヵ月に一度は会って遊んでいる。

今や、友達の中でも独身でいるのは祐太郎くらいなもんで。

気軽に誘えるのも祐太郎ぐらいになってしまった。

「お前、ちゃんと鍛えてんのか?」

「あー、最近はジム行けてないなー」

まず、祐太郎は俺の顔を見て「シケた顔」と言って。

次に「ちゃんと鍛えてるのか」と決まり文句を言う。

祐太郎は365日、タンクトップ姿で現れ。

自分の筋肉を見せつけてくる。

コイツは筋金入りの筋肉バカと言っていい。

昔からそうだった。

職を転々としてきたそうだけど。今はスポーツジムのトレーナーをしている。

今日も、白いタンクトップを着て。

その上に紙エプロンを着けて。

阿呆みたいに焼肉をがっついている。

祐太郎の食べる姿を見ていたら、だんだん食欲がなくなってきた。

「満員電車が辛いんだ・・・」

仕事場が東京になったという近況を話すと。

ガツガツ肉を食べていた祐太郎が、「ふーん」と言って。

「じゃあ、オレの部屋で暮らせば?」
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