君色に染められて
私自身も、こんなことをするとは思わなかった。


私は市原君の隣に立って、空を見上げる。


「……ハロウィンのとき、市原君が言ってたでしょう?学校の外では楽しめないって」


市原君の横顔を盗み見る。
だけど、市原君はもう外を見ていなくて、市原君と目が合った。


私は恥ずかしくて外に視線を戻す。


「……市原君と、クリスマス楽しみたいって、思った、から……市原君はもう生徒会長じゃなくなって、クリスマス会を企画できないと思って……」


市原君は何も言ってくれない。
無言の時間が耐えられない。


私は市原君から離れようとしたけど、市原君に捕まった。


「……センセ、抱きしめたいです」


振り向けなくて、私はそのまま頷く。
すると、市原君は後ろから私を抱きしめた。


「ありがとう、センセ」


左耳が痒かった。
市原君の息が少しだけかかって、その温度が全身に広がっていく。


彼のありがとうは、今日たくさん言われた中で、一番嬉しかった。


市原君は離れると、私の体の向きを変えた。


「うん、似合ってる」


市原君は私の首元を見ている。
まさかと思ってそこに手を当てると、ネックレスが付けられていた。
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