君色に染められて
「喜んでもらえてよかった」


すると、市原君はマフラーを外し、私に巻いた。
両端を持っている市原君は、そのままマフラーを引っ張る。


私は市原君の胸に飛び込む形になってしまった。


市原君はマフラーの残った部分を自分に巻いた。


ハロウィンのときのマントの中以上に、市原君の顔が近い。


市原君の顔が見れなくて、顔を下げる。
だけど、市原君は私の顎に手を添え、顔を上げた。


「逃げないで」


彼はそう呟くと、唇を重ねた。
寒い廊下だからか、彼の唇は冷たかった。


唇が離れると、ますます市原君の顔が見れなくなった。


市原君がマフラーを外してくれないから、体は密着したままで、寒いはずなのに、体温は上昇していく一方だった。


市原君は強く私を抱きしめる。


「ずっとセンセを腕の中に閉じ込めておきたいです。可愛い笑顔も、誰にも見せたくない」


それは市原君の本音だと思った。
私は市原君の背中に手を回す。


「貴方と一緒にいたいからって、らしくないことをしてしまうくらい、貴方のことが好きよ。それはきっと、これからも変わらない」


市原君の力が強くなった。


昔の私なら、誰かに素直に想いを伝えることなんてしなかった。
きっと、市原君を好きになったから、変われたんだと思う。


この先もずっと、私は君色に染められていく。
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