『由美香へ』
さらにその翌日、私の席の横を通り掛かった男子が、図工の準備で出していた糊や鋏を見て、大声で言った。
「あれぇ?
お前の持ち物、なんでみんな苗字を消して
かきなおしてあんの?」
まだ名前も知らない男子の、その攻撃的な言葉に、私は足が竦んだ。
両親の離婚で母の旧姓に変わった私の持ち物を、全部買い直す余裕は母にはなく、あらゆる物の名前が苗字を二重線で消して書き直してある。
それは仕方のないことだと思うし、私も理解していたはずだった。
だけど、こんな風に攻撃されるなんて、初めてのことで、どうしていいか分からない。
そんな時、前の席の由美香がくるりと振り返った。
「タケ!
そういうこと言うの、やめなよ!」
小さな体で猛然と抗議してくれる。
「え…
いや、別に、俺、そんなつもりじゃ…
ただ、なんでかな?って思ったから聞いた
だけじゃん。」
声が大きいから攻撃的だと思っただけで、実は悪気なく発した一言だったらしい。
「あ、あの、うち、両親が離婚したの。
だから、私も苗字が変わったから…」
私は勇気を振り絞ってそう言った。
すると由美香は笑って言った。
「歩実ちゃんちだけじゃないよ。
うちも離婚してるし。
他にもいっぱいいるから、気にしちゃ
ダメだよ。」
そうか。
由美香ちゃんちもなんだ。
それから、私たちは急速に仲良くなった。
いつもハキハキしていて、世話好きの由美香は、いつも人見知りでおどおどしてる私の世話をよく焼いてくれた。
「あれぇ?
お前の持ち物、なんでみんな苗字を消して
かきなおしてあんの?」
まだ名前も知らない男子の、その攻撃的な言葉に、私は足が竦んだ。
両親の離婚で母の旧姓に変わった私の持ち物を、全部買い直す余裕は母にはなく、あらゆる物の名前が苗字を二重線で消して書き直してある。
それは仕方のないことだと思うし、私も理解していたはずだった。
だけど、こんな風に攻撃されるなんて、初めてのことで、どうしていいか分からない。
そんな時、前の席の由美香がくるりと振り返った。
「タケ!
そういうこと言うの、やめなよ!」
小さな体で猛然と抗議してくれる。
「え…
いや、別に、俺、そんなつもりじゃ…
ただ、なんでかな?って思ったから聞いた
だけじゃん。」
声が大きいから攻撃的だと思っただけで、実は悪気なく発した一言だったらしい。
「あ、あの、うち、両親が離婚したの。
だから、私も苗字が変わったから…」
私は勇気を振り絞ってそう言った。
すると由美香は笑って言った。
「歩実ちゃんちだけじゃないよ。
うちも離婚してるし。
他にもいっぱいいるから、気にしちゃ
ダメだよ。」
そうか。
由美香ちゃんちもなんだ。
それから、私たちは急速に仲良くなった。
いつもハキハキしていて、世話好きの由美香は、いつも人見知りでおどおどしてる私の世話をよく焼いてくれた。