『由美香へ』
 3年生になると、私たちは初めて違うクラスになった。

人見知りの私だけど、比較的穏やかな子が多いクラスで、一月程でクラスに馴染むことができた。

 それでも下校は、相変わらず由美香と帰った。
他愛もない話をしながら、楽しい時間で毎日を締めくくった。

私は、なんであの時、ちゃんと聞いてあげなかったんだろう。

「部活、行かなくていいの?」って。

私の前では、ずっと笑ってた由美香。

全然変わりないように見えてた。

そうじゃなかったのに。


 7月7日。
由美香は星空に輝く織姫になった。

なんで…

突然のことで、私には状況が全く理解できなかった。

ただ、担任から今夜通夜があると言われて、私は母と斎場に向かった。

棺の中の由美香は、眠っているように綺麗だった。

看護師をしている由美香のお母さんが夜勤の間に、大量購入した市販薬を数百錠飲んだらしい。

薬局では睡眠薬は買えなかったから。

通夜が終わった時、由美香のお母さんと話していた先生が私を呼んだ。

「歩実ちゃん?
いつも由美香と仲良くしてくれてたの
よね?
ありがとう」

「いえ」

私には何も言えなかった。

仲良くしてたのに、いつも一緒にいたのに、由美香のこの決断に、気付くことも止めることも出来なかったんだから。

「これね、由美香から歩実ちゃんへ最後の
手紙。
ごめんなさいね。
警察の方が、捜査のために開封して
しまったんだけど、読んでやって
くれる?」

由美香の最後の手紙。

その瞬間に、我慢してた涙が止めどなくこぼれ落ちた。

涙で滲んだ視界の中、ただ無言で頷いてその手紙を受け取った。
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