カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん
◇◇◇
昼休み。
琴梨は一人ぽつんと
自分の席でお弁当を食べている。
そして時折顔をあげ
ぼーっと外を眺めていた。
あいつのメガネと長い前髪で隠された瞳は
今、何をとらえているんだろう。
やっぱり俺
学校でも琴梨のことばっかり考えてるじゃん。
男女6人で机を合わせ
弁当を食べようとした時
「はちやさ~ん、1年生が呼んでるよ。」
ドア近くにいた女子が
教室中に聞こえるくらい大きいな声で
琴梨を呼んだ。
琴梨に会いに来たのが誰なのか気になって
俺もドアに視線を送る。
誰だ、あの1年は?!
瞳がクリッ。
色白で線が細い。
女子みたいにかわいい顔をした男子が
不安そうな顔をして立っていた。
「開都(かいと)くん、どうしたの?」と駆け寄る琴梨。
「琴梨せんぱい……
昨日はお休みしてごめんなさい……」
どうやら
読み聞かせ会を熱が出てお休みした
同じ部の1年男子のようだ。
「急に熱が出ちゃったんでしょ。
それはしょうがないよ。
もう平気?辛いとことかないかな?」
「昨日はフラフラだったけど
もう大丈夫です。
琴梨先輩、俺のこと
嫌いになったりとかしてませんか?」
「ステージの上では
休んだ開都くんのことを恨んだよ……」
「どうしよう……どうしよう……
部活の帰りに
もう俺と一緒に帰ってくれないとか……
嫌です……」
「恨んだのなんて一瞬。
なんとも思っていないから。
もう自分の教室に戻ったら。
お昼まだでしょ」
「はい……
琴梨先輩……またあとで」
そのアイドルみたいな顔をした1年は
俺を見たかと思うと
自分のクラスに戻って行った。
なんか今、睨まれたような……
「今のカワイイ男の子、1年生でしょ?」
「だれだれ? 八夜さんの彼氏かな?」
「いつも八夜さんって人と話さないけど
あの1年生の子とは普通に笑って話してたね。」
「なんか意外な一面を見たって感じ」
クラスのヒソヒソ話に気づいたのか
琴梨はハッっという顔をして
うつむきながら自分の席に戻って行く。
なんかムカつく
無性にムカつく
怒鳴りたいほどムカつく
今日は俺のことを避けているくせに、
あいつには笑顔を振りまいてさ。
部活の時にはあいつと一緒なんだよな。
しかも二人で帰ったりしてるのかよ。
「みんなごめん。
先生に呼ばれていたの忘れてたから
先にお昼食べてて」
王子キャラを保っていられないほど
ムカついている俺は
逃げるように教室を後にした。