カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん
「名前が『有宮 開都(あるみや かいと』
有と開くのパカで、アルパカ。
色白だし髪もパーマかかってるし」
「お前、すっげーあだな思いつくな。
礼音が今抱きしめてるクッションも
アルパカだけど」
アルパカのつぶらな瞳と目が合った。
なんか憎たらしく思えてきた。
俺はクッションをベッドに投げつける。
「まっ行動しないと、とられちゃうよな。
だって読み聞かせ部って
今日で3年が卒業して
これからは八夜さんとアルパカくんが、
2人だけってことだもんな」
「は?」
今……
なんて……?
これからは……
部室の中で、琴梨とアルパカが2人きり?
「……知らなかった。
俺どうしたらいい?」
「じゃあさ
礼音が読み聞かせ部に入ればいいじゃん。
って、それはムリか。
お前は放課後、
月、火以外は美容院のバイト入れてるだろ?」
「だな。それに土日もだし。
部活に入ってる余裕はない」
「じゃあ明日
なんとかするしかないんじゃないの?
礼音は
放課後に琴梨をどこに連れていく気?」
「……カフェ……とか?」
「マジで?
なんのひねりもねえじゃん。
そりゃアルパカくんに
八夜を持っていかれるわ」
「じゃあどうしたらいいんだよ」
新はニヤリと俺を見た。
「良いこと考えちゃったかも……」
新がそのアイディアを、俺に伝えた。
「は?ムリムリ!
琴梨に嫌われる可能性大じゃん」
「じゃあカフェでモジモジ話して
じゃあねバイバイ?
そんなんじゃ
あの年上をくすぐるルックスをもった
アルパカくんには
勝てないと思うけど」
「……っ、わかったよ。
陽介さんに電話で聞いてみる」
「おう。それでこそ礼音だな。
あ~俺の方が楽しみになってきた。
早く明日の放課後にならないかな~」
新の奴
俺の真剣な恋心で遊びやがって。
でも俺は
そういうこいつが結構好きだ。
子供のころからずっと
人前でカメレオンのように
性格を変える俺の隣に
いてくれてるんだから。
変わった奴だよな、新って。
俺はとりあえず家に帰り
明日の放課後について、細かく細かく考えた。