カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん

 ――次の日
 
 
 俺は登校したら
 思いきって席に座っている琴梨に
 挨拶をすると決めた。


 決めたはずなのに……

 自分の席から離れることができない。

 俺の意気地なし。


 カメ礼音になりきれば
 挨拶くらい余裕じゃん!

 と、自分に言い聞かせてみたものの……

 他の奴にはできる演技が
 琴梨にはできない。


 ただ琴梨の席の横を通って
 笑顔で『おはよう』って言うだけ。

 俺の任務はそれだけ。

 すっげー簡単なことなのに。

 琴梨の顔を自分の席から見るだけで
 心臓のドキドキがおさまらない。


 あ~あ。

 たかが挨拶一つできないなんて
 本当にヘタレだな……俺は。



 そう思っているうちに
 朝のホームルームが始まってしまった。

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