カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん
☆琴梨side☆
「どこに行くの?」
「駅前通りにある『ブリス』っていう美容院。」
「び……美容院??」
「本屋の向かいにあるから。」
「それって……
礼音くんの髪を切るのを……
私が見ているってことかな……」
そうだよね。
きっとそうだよね。
私の髪を切るなんてことは……
「は?
俺はこの髪型が気に入っているから、
切る必要ないし。」
「それって……」
「そう。琴梨の髪を切りに行く。
俺好みの髪型にしてもらうから、安心して。」
え??
私の髪を……切る?
どんな髪型にするつもりなんだろう……
そりゃ、
私の髪型がダサいってことくらいわかっている。
前髪はメガネが隠れるほど長いし、
腰の下まで伸びた髪は、
いつも首あたりで一つ縛り。
でも、これが一番安心する。
教室で、
自分の存在感を消すための髪型だから。
「私……帰る……」
「琴梨、待って。
とりあえず、美容院までは来て。
切るかどうかは、
その時に決めてくれればいいから。」
なんで礼音くんは、
私の髪を切りたがるんだろう……
いつもは上から目線で命令口調なのに、
そんな悲しそうな目で見つめられたら、
NOとは言えないよ。
「わかった……」
「よかった。」
礼音くんは
心から安心したような笑顔を向けると、
『先に行ってるからな』と言って、公園を出た。