カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん
 
☆琴梨side☆

 
「なんとか読み聞かせ会が終わった
 良かったぁぁぁ」



 体中の空気をゆっくり吐き出すと同時
 思いだしたこと。



 そうだ、花名(かめい)くんは??


 イベント会場をキョロキョロキョロ。

 ステージ横にも客席にも見当たらない。

 そうだよね、もう帰っちゃったよね。

 読み聞かせ会の前に
 花名くんが私に話しかけてくれたのなんて
 奇跡以外の何物でもないし。



 あの時、確かに花名くんは私を励ましてくれた。

 それは私の頭についているヘアピンが
 証明してくれている。


 でも……

 あの王子様が私に話しかけてくれることは
 きっともうないだろうな。


 花名くんの周りは
 いつもカワイイ娘たちが輪を作っている。

 ファッションや恋バナで盛り上がる
 おしゃれ女子達ばっかり。


 いつも教室に独りぼっち。

 友達もいない地味な私なんて
 相手にされるわけがないよね。



 瞳を陰らせながら
 絵本をぎっしり詰め込んだ手提げバックを両肩にかける。

 今日も重いな……

 体が右に傾きながら図書館を出た時

「八夜さん……」

 私に本日2度目の奇跡が舞い降りた。

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