カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん
☆礼音side☆
俺は今
琴梨の家まで一緒に歩いている。
俺が王子キャラを演じていることを
知っているのは
家族と親友の新(あらた)だけ。
それなのに俺が
他の奴に本性を見せるときが来るとは……
しかも、今まで同じクラスながら
全く惹かれたことがなかった琴梨に……
『私、教室で見る花名くんより
今、目の前にいる
花名くんの方が好きだな……』
綺麗な瞳を俺に向けて言ってくれた
琴梨のこの言葉。
それを聞いた瞬間
琴梨のことを強く強く抱きしめたい
衝動にかられた。
つっぱしりそうな俺をとめてくれたのも
透き通った琴梨の瞳だった。
セーフ。
俺の感情のままに琴梨を抱きしめていたら
始まったばかりの琴梨とのこの関係も
終わってしまっていたかもな。
本当にまずいな。
俺、琴梨のことが気になってしょうがない。
これって……
好きになったってことだよな?
俺が自分の気持ちと向き合っているとき
琴梨が小さい口を開いた。
「私、頑張ってステージに立って
良かったって思っているよ」
「あんなに震えていたのに、すごいな琴梨は。
それにしても絵本を読むのうまいじゃん」
「幼稚園からね劇団に入っていたの。
小6でやめちゃったけど」
「それならステージに立つのなんて
なれてるんじゃないのか?」
「子供の頃は
ステージで演じるのが大好きだった。
でもね小6の時の公演中に
本番のステージで声が出なくなっちゃったの。
あの時の客席の視線が
今でも瞳に焼き付いてるんだ。
それからはずっと避けていた。
ステージに上がるのも人と接するのも」
「何かあった?」
悲しそうな瞳でコクリとうなずく琴梨。
今にも泣きだしそうな顔を見たら
それ以上は聞けなかった。