カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん

「花名くんありがとう。
 ここが私の住んでいるマンションだから」


「部屋まで持っていける?
 その大量の本」


「平気だよ、エレベーターがあるし。
 これくらいの絵本を持ていけないようじゃ
 読み聞かせ部には入れないからね」


 そっか……

 もう今日は、琴梨とサヨナラか……


 もっと琴梨と一緒にいたいと思うのに
 そんな思いを伝える勇気はこの俺にはない。


 でも、どうしても一つだけ。

 これだけは
 琴梨にお願いしたいことが……



「琴梨、俺のこと……
 下の名前で呼んでくれない?」


 俺いま、すっげー恥ずかしいことを言ってるよな。
 
 夕焼けお願い、俺の頬を夕日でごまかしてくれ。


「二人の時だけだったら……呼べるかも」


「じゃあ、今呼んで」


 俺の無茶なお願いに、顔を赤く染める琴梨。


「れ……れおん……くん……。
 これで……いい?」


 恥じらいながら俺の名前を呼んでくれた。

 琴梨がすっげーかわいい。


「あ……あの……
 私のお願いも……
 聞いて……くれませんか?」


 うつむきながら、爪をこする琴梨。

 この姿もかわいすぎる。


 でも、俺はちょっと引っかかってしまった。


 図書館で会った時より
 だんだん俺に敬語を使わなくなったのに
 また敬語に戻ってるし。


 敬語ってなんか壁を感じるんだよ。


「琴梨のお願いってなに?」


 ムッとしたのが声に出てしまった。


 琴梨はビクッとして
 余計にちぢこまってるし……


「だからなんだよ、俺にお願いって」


「それは……
 教えて欲しいなと思って……」


「だから、何を?」


 「礼音くんは……どんな女の子が……
 好きなのかって……」


「え?」


「ごめんなさい……
 今言ったこと……忘れてください……
 今日は本当にありがとう……」


 そう告げると琴梨はタタタと走って
 マンションのエントランスに消えた。


 今のは……

 なんだったんだ?

 俺がどんな子が好きかって?

 それって俺のことが好きってことか?

 琴梨、どうなんだよ!!

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