If・・・~もしもあの時死んでいたら~
新しい年、新しい生活
ドキドキ新年会
一月四日の初出勤の日は、仕事は無く会議室にちょっとした立食パーティの準備がされて、新年会がある。
本社の全部署合同だ。
だから、その席には安田さんも、奈々美も、めぐみもいる。
みんな驚くかな?
驚くよね。
わたし達が付き合っている事はみんな知っていたので、いつかこういう事になるだろうとは想像がついていたと思う。
だけど、バタバタと事が進んじゃって-----それもこれも二十代のうちにというのが純平の中にあったからだけど-----本当にびっくり。
「それじゃ、行こうか」
「緊張してきちゃった」
いつものように地下の駐車場に車を停めエレベーターに乗る。
「めぐみ、来てるかな?」
「どうだろうね」
「奈々美、来てるかな?」
「どうした?」
「ううん」
わたしの不安を感じ取ったのか、純平はそっと背中に腕を回し、大丈夫だよって言ってくれた。
うん。
大丈夫だよね。
会議室を覗くと、すでにたくさんの社員が集まっていた。
時間まで料理はおあずけ。
仲の良い者同士で雑談している姿が見えた。
「めぐみ! 奈々美!」
その中に、めぐみと奈々美のツーショットを見つけ駆け寄る。
「清美、明けましておめでとう!」
「おめでとう。二人とも、元気だった?」
「うん、元気だったよ。毎年の事ながら、また正月太りしてしまった」
そう言ってお腹をさすっているのはめぐみ。
「わたしはね、ちょっと話したい事、あるの」
「えっ? 何?」
「三人になった時に話すよ」
そう言ったのは奈々美だった。
表情は困ったような、それでいて嬉しいような。
たぶん悪い話ではなさそう。
「清美は?」
「えっ!」
ちょっと油断してて現実に引き戻されてしまった。
「何そんなに驚いてるのさ」
「うん。わたしもちょっと報告有りかな」
「何?」
「うん、後で純平と一緒に話す」
午前九時を回り、社長からの新年の挨拶が始まる。
みんな静粛な面持ちで耳を傾けた。
続いて経理部長の乾杯の音頭……のはずが、何故か純平と二人、ひな壇に呼ばれた。
「えー乾杯の音頭の前に、椎名くん達から報告があります」
もしかして、今発表?
もう少し時間が経ってからだとばかり思っていたので、心の準備が出来ていなかった。
一気に緊張が高まる。
ただでさえ、こんなに大勢の人の注目を浴びるのは苦手なのに、どうしたらいいの?
「皆さん、今日はご報告があります。わたくし椎名純平は、この度小田清美と結婚致しました」
「えーーー」
一斉に轟く怒号のような声。
怖い。
この場から逃げ出したい。
そう思っている時だった。
「おめでとう!」
声がした方を見ると、手を叩いて祝福してくれている安田さんの姿があった。
「何みんなびっくりしてるのよ。正月早々おめでたい話じゃない。みんなで祝福してあげましょうよ」
彼女の号令で、拍手の輪が広がった。
「清美、おめでとう。さっき言ってた報告ってこの事だったのね!」
「でもびっくり。ずいぶん急だったのね」
駆け寄って来ためぐみ達も祝福してくれた。
「あー、皆さん、ついでに僕からも話があります!」
手を挙げた主は、安田さんの彼氏、西田さんだった。
「真紀さん、ちょっといいかな?」
「あたし?」
戸惑いながら、壇上に進む安田さん。
純平が引っ張るので、わたしは壇上から降りた。
「真紀さん、僕たちまだ付き合い出して半月ぐらいだけど、愛しています! 僕と結婚して下さい!」
わっ。
公開プロポーズ。
テレビとかではよく見る光景だけど、こうして生で見るとドキドキする。
西田さん、カッコいいです。
で、安田さん?
お返事は?
固まってしまった安田さん。
どうなっちゃうの?
「真紀さん?」
西田さんも不安な表情だ。
それから会場にいるみんなも。
「あ、あの……まさかこんな場面でプロポーズされるとは思ってなかったんで、正直ちょっと驚いてます」
「で、で? 安田さん、返事は~?」
チャチャを入れた他の社員がギロッと睨まれる。
やっぱり安田さんの睨みは健在でした。
その場の空気が一気に変わる。
もしかして、断るの?
「ちょっと考えさせて下さい」
それが安田さんの答えだった。
まだ、亡くなった彼氏の事を引きずっているって事?
気持ちはわかるよ。
でも、安田さんにも前を見て歩いていってもらいたい。
「あ、でも前向きに考えますから、そんなに深刻な顔はしないで」
落ち込む西田さんに声を掛ける安田さんは、優しい笑顔に戻っていた。
「あ、ごめんなさいね、純平と小田さんの結婚報告が霞んじゃって。ほら、話を戻しましょう。で、純平達、いつ籍を入れたのよ」
「えっ? ああ、元旦」
「またどうして急に?」
「彼ったら、二十代のうちにどうしても籍を入れたいって言うんですよ」
「ふふっ。純平らしいわね」
「安田、お前だって三十代で結婚って言うより、二十代でしたいと思わない?」
「残念。わたし先月三十歳になっちゃったの。だからあなたみたいに焦って無いわ」
「それは残念。西田さんちょっとタイミング遅かったですね」
「失敗したな」
本社の全部署合同だ。
だから、その席には安田さんも、奈々美も、めぐみもいる。
みんな驚くかな?
驚くよね。
わたし達が付き合っている事はみんな知っていたので、いつかこういう事になるだろうとは想像がついていたと思う。
だけど、バタバタと事が進んじゃって-----それもこれも二十代のうちにというのが純平の中にあったからだけど-----本当にびっくり。
「それじゃ、行こうか」
「緊張してきちゃった」
いつものように地下の駐車場に車を停めエレベーターに乗る。
「めぐみ、来てるかな?」
「どうだろうね」
「奈々美、来てるかな?」
「どうした?」
「ううん」
わたしの不安を感じ取ったのか、純平はそっと背中に腕を回し、大丈夫だよって言ってくれた。
うん。
大丈夫だよね。
会議室を覗くと、すでにたくさんの社員が集まっていた。
時間まで料理はおあずけ。
仲の良い者同士で雑談している姿が見えた。
「めぐみ! 奈々美!」
その中に、めぐみと奈々美のツーショットを見つけ駆け寄る。
「清美、明けましておめでとう!」
「おめでとう。二人とも、元気だった?」
「うん、元気だったよ。毎年の事ながら、また正月太りしてしまった」
そう言ってお腹をさすっているのはめぐみ。
「わたしはね、ちょっと話したい事、あるの」
「えっ? 何?」
「三人になった時に話すよ」
そう言ったのは奈々美だった。
表情は困ったような、それでいて嬉しいような。
たぶん悪い話ではなさそう。
「清美は?」
「えっ!」
ちょっと油断してて現実に引き戻されてしまった。
「何そんなに驚いてるのさ」
「うん。わたしもちょっと報告有りかな」
「何?」
「うん、後で純平と一緒に話す」
午前九時を回り、社長からの新年の挨拶が始まる。
みんな静粛な面持ちで耳を傾けた。
続いて経理部長の乾杯の音頭……のはずが、何故か純平と二人、ひな壇に呼ばれた。
「えー乾杯の音頭の前に、椎名くん達から報告があります」
もしかして、今発表?
もう少し時間が経ってからだとばかり思っていたので、心の準備が出来ていなかった。
一気に緊張が高まる。
ただでさえ、こんなに大勢の人の注目を浴びるのは苦手なのに、どうしたらいいの?
「皆さん、今日はご報告があります。わたくし椎名純平は、この度小田清美と結婚致しました」
「えーーー」
一斉に轟く怒号のような声。
怖い。
この場から逃げ出したい。
そう思っている時だった。
「おめでとう!」
声がした方を見ると、手を叩いて祝福してくれている安田さんの姿があった。
「何みんなびっくりしてるのよ。正月早々おめでたい話じゃない。みんなで祝福してあげましょうよ」
彼女の号令で、拍手の輪が広がった。
「清美、おめでとう。さっき言ってた報告ってこの事だったのね!」
「でもびっくり。ずいぶん急だったのね」
駆け寄って来ためぐみ達も祝福してくれた。
「あー、皆さん、ついでに僕からも話があります!」
手を挙げた主は、安田さんの彼氏、西田さんだった。
「真紀さん、ちょっといいかな?」
「あたし?」
戸惑いながら、壇上に進む安田さん。
純平が引っ張るので、わたしは壇上から降りた。
「真紀さん、僕たちまだ付き合い出して半月ぐらいだけど、愛しています! 僕と結婚して下さい!」
わっ。
公開プロポーズ。
テレビとかではよく見る光景だけど、こうして生で見るとドキドキする。
西田さん、カッコいいです。
で、安田さん?
お返事は?
固まってしまった安田さん。
どうなっちゃうの?
「真紀さん?」
西田さんも不安な表情だ。
それから会場にいるみんなも。
「あ、あの……まさかこんな場面でプロポーズされるとは思ってなかったんで、正直ちょっと驚いてます」
「で、で? 安田さん、返事は~?」
チャチャを入れた他の社員がギロッと睨まれる。
やっぱり安田さんの睨みは健在でした。
その場の空気が一気に変わる。
もしかして、断るの?
「ちょっと考えさせて下さい」
それが安田さんの答えだった。
まだ、亡くなった彼氏の事を引きずっているって事?
気持ちはわかるよ。
でも、安田さんにも前を見て歩いていってもらいたい。
「あ、でも前向きに考えますから、そんなに深刻な顔はしないで」
落ち込む西田さんに声を掛ける安田さんは、優しい笑顔に戻っていた。
「あ、ごめんなさいね、純平と小田さんの結婚報告が霞んじゃって。ほら、話を戻しましょう。で、純平達、いつ籍を入れたのよ」
「えっ? ああ、元旦」
「またどうして急に?」
「彼ったら、二十代のうちにどうしても籍を入れたいって言うんですよ」
「ふふっ。純平らしいわね」
「安田、お前だって三十代で結婚って言うより、二十代でしたいと思わない?」
「残念。わたし先月三十歳になっちゃったの。だからあなたみたいに焦って無いわ」
「それは残念。西田さんちょっとタイミング遅かったですね」
「失敗したな」