大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 ちなみにこの社員食堂は、伊ヶ崎の系列会社の食品系を扱う会社が運営している。勿論同じビル内にその会社の本社も入っているので、たまにそこの商品開発部が一般に発売する前の試食として新しいメニューを期間限定で追加してくる。そういう所が、この社員食堂の魅力の一つだったりする。悠真が興味を示してもおかしくない。私だって惹かれて来ているのだから。

 だけど、この状況……隣に夫がいる。社内なのに隣で夫が、恐らく私と同じ日替わり定食を食べている。

 ……これは、一緒にご飯を食べていると言ってもいいんじゃない?

 そんな残念な思考に至って、内心頭を抱えた。

 私ったら、何を一人自意識過剰な事を……!

 チラリと隣を見やると、普通に日替わり定食を食べていた。他の社員と違って、食べる姿も一線を画している。私の目にフィルターが掛かってるのかもしれない。

 悠真と食べに行く時は、必ずお洒落な高級レストランへ行くので、社員食堂で食べている姿は新鮮だった。

 リラックスしたように椅子に腰掛ける彼の姿は、きっと多くの人が見惚れてしまうんだろう。それくらい様になっていた。

 うっかり見すぎていたせいで、悠真が私の視線に気付いて目が合う。チラリと私の日替わり定食のお盆に乗った財布を視界に入れた彼は、ニッコリと機嫌のよさそうな微笑みを浮かべた。


「君はよく社食使ってるの?」

「あ、そうです。とても美味しいのに安くて……。同僚の葉月さんと一緒によく利用してます」
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