大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 キョトンとした表情の涼は、高校生の頃からどこか退廃的な色気を纏っていた。どちらかと顔の作りもそうだが、気だるげな雰囲気を持っているからだろう。本人曰く、慢性的な寝不足らしいけど。


「由弦と帆乃香見てたら、ああ、結婚っていいなあって思ってさあ。美咲は思わねえ?」

「それはとても思うけど……」


 歯切れの悪い返事になってしまった。正直、由弦と帆乃香の夫婦は羨ましい。彼らは中学入学して程なく付き合い、大学卒業と同時に結婚をした。今でも熱々な二人である。

 私の方が結婚だけは早くしたのに、待望されているはずの子供すら出来ていない。

 当たり前だ。白い結婚なのだから。

 近くにいるのに遠い夫の存在に、膝の上に置いていた手を握り締める。


「美咲は未だに政略結婚にこだわってんの?」


 私は一瞬緊張で息が詰まって、バレないように細く吐き出す。動揺を悟られないように笑みを浮かべようとした所で、タイミング良くウェイターが注文の品を持ってきた。


「……私が政略結婚にこだわっている訳じゃないの」
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