大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 周囲の音が一瞬消えた。でも、それは私の気のせいで、徐々に店内で流れているクラシックや、隣の席の女性の、本のページをめくる音が戻ってくる。

 いつもと同じ軽い調子で、なんでもない日常の事のように提案してきた涼に、思わず眉を寄せた。


「……なんでそう思ったの?」


 ドキリともしなかった。ずっとこのまま友人だと思っていた男に、プロポーズ紛いな事をされても。

 これが悠真だったら、舞い上がっていたんだろうなあ。


「もう十年以上の付き合いで、気が置けない仲だろう?そっちの方が結婚生活上手くいくかなってさあ」

「でも友人関係と夫婦関係は違う」


 ……私と、悠真のように。

 友達からいきなり夫婦になって、十年経つのに進歩が全くない。仲は良いと思う。お互いにプレゼントを贈りあって、記念日は一緒にいる。

 表面上は仲のいい夫婦だけれど、その中身はただの友達にも近い距離でもある。


「そーそー。だけどさあ、よく知らない人と結婚するより、知ってる人と結婚した方がよくね?」
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