大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 交通事故だった。
 病院の椅子に座り込みながら、これからどうしようという気持ちしか湧いてこなかった。友人の兄が死んだ時のように、誰かが死んだという実感がなかった。

 母親一人、息子一人。
 母方の祖父母がいたが、どちらも高齢で何があるか分からない。大学は諦めて、なんとか高校だけは卒業しておきたい……と思い詰めた時、その人は現れた。


「遅くなってすまない」


 長年養育費を振り込んでもらい、時々会っていた父親、だった。

 母親からは父親はかなりの金持ちだと聞いていたし、それまでの暮らしもそれなりに裕福な方だっただろう。俺の目から見る限り、結婚はしていなかったが、両親の仲は悪くはなかった。

 結婚しなかった理由は、将来の方向性の不一致と父方の祖父母の大反対。駆け落ちするだけの気概はなかったそう。そして、母親がバリバリのキャリアウーマンで、家庭に入れるタイプではないので別れたと話していた。

 彼女が自分をそう称した通り、母親は家事が壊滅的に出来なかった。唯一、自身の好物であるクリームシチューが作れるだけ。それも市販のルーを使うやつ。あとは俺が作るか、外食。
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