大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
「あ……、いや、ごめん。答えたくないのならいいよ」

「ううん。大丈夫だよ。私、涼の事、好きでもないし」


 なんて事ないように首を横に振った私に、悠真はホッと一息つく。でも、続けて言った私の言葉に凍り付いた。


「だって私、政略結婚するから、恋愛なんてしないって決めているの」

「せ、政略結婚……」


 信じられないものでも見たとでもいうように、愕然と私の言った単語を反芻した悠真。何を驚く事があるのだろうかと、私は内心首を傾げた。


「驚く事かな?普通の事だと思うけど」

「……今時、政略結婚なんてやってるんだね」


 眉を寄せた悠真は、考え込むように口元に手を当てる。彼の言うことは最もだった。


「確かに古いよね。私もそうは思うんだけど、私の家代々政略結婚だし……」


 今の時代、政略結婚なんてやっている家はもうほとんどない。根強く続けている家はそれでもある。円城家もそのうちの一家だった。


「……嫌じゃないの?」

「嫌?うーん、考えた事もなかったなあ……」


 親の決めた人とお見合いして、そのままその人と結婚する。相手は漠然としていて、具体的に想像すらしていなかった。
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