大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 結婚している事をオープンにはしていないので、使う機会はあんまりなかったのだ。ドレッサーの中に大事にしまっている。だから今、お互いの左手の薬指には何もつけていない。


「そう。セカンドマリッジリング……になるけど、やっぱりケジメは付けておきたくて」

「ケジメ?」

「うん。前のは俺のお金で買ったわけじゃないし、こうやって夫婦になれた訳だし……」


 少年のようにはにかんだ彼。私の左手をとって、薬指にキスをした。


「付けてくれる?指輪」


 行動の一つ一つが甘くて、心臓に悪い……と思いながら私は頷いた。


 パーティー用のドレスを決めるショップは、注文の為に以前にも来た。それだけでなく、前にも円城家の集まりでフルオーダーのドレスを何度か頼んでいるので、お得意先でもある。

 仮縫いのドレスが運ばれてきて、感嘆の声が出た。
 総合商社《伊ヶ崎》の会社ロゴの色に合わせた青色のAラインのドレス。シルクオーガンジー生地のドレスは、落ち着いた光沢感があり、同時に華やかさも兼ね備えていた。

 一応パーティーでは主役の一人でもあるので、ドレスにもアクセサリーにも気合いを入れるつもりなのだろう。飾り立てられた私は、何となく衣装負けしているような気分になってくる。
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