殺人鬼と女子高生1
そそくさと支度を済ませて早足で向かっていた。行先は決まっている。
(今日はいるかな〜)
わくわくしながら、軽快に足を進めていた。
カフェに着いて、外から窓を覗いてみる
「いた!」
私はすぐに店の中に入った
そして、一直線にあの人の元へ向かっていった
「こんばんは!」
「こんばんは、今日も勉強かい?偉いですね」
「そんな事ないです」
思わず口角が緩んでしまう
「あ、前に言ってた本持ってきましたよ」
「わざわざすみません!楽しみにしてました」
「僕も君と話すのが楽しみでしたよ」
「えっ...」
ぽっと頬が赤くなった
「まぁでも、君の勉強の邪魔をするのもあれだから、行き詰まった時に読んでね」
と、本を渡してくれた。大きな、男の人らしい、細いけど筋の通った綺麗な手
思わず見とれてしまった
「ん?どうしたのかな?」
「なんでもないですっ!あ、あの…」
私は、勇気を振り絞った
「お名前、聞いてもいいですか?」
「僕?あぁ、申し遅れちゃってごめんね、塚田稜(つかだりょう)です。君は?」
「私は、佐々木牡丹(ささきぼたん)です!」
「牡丹ちゃんか、可愛らしくて稀な名前だね」
「えへへ、そうですかね」
塚田さん…塚田さん…ずっと心の中で繰り返し言い続けていた。やっと聞けた、この名前を忘れないように
「そうだ、牡丹ちゃん」
「はい?」
「最近、ここら辺は物騒だからね。帰り道には気をつけて。」
(あ、そういえば…)
近頃、連続殺人鬼がこの県内で逃走しているらしい。
まだ捕まっていないし、昨日も人が殺された。
学校では、そのせいで授業がいつもより少し早く切り上がる。
「まだ、捕まってないみたいですよね…」
「うん、そうなんだ」
怖いけど、学生の私としては
学校が早く終わるのと、
この非日常感を少し満喫していた。
なんて言うか…そう、「白昼夢」みたいな。
「じゃあ、そろそろ行くよ。」
「あ、分かりました!」
「また話しに付き合わせちゃってごめんね」
「いえいえ!楽しかったです!…あの、また、こうやって話したいです…」
そう言うと、塚田さんは少し驚いたような顔をして
「うん、そうしよう」
と、優しく笑ってくれた。