お願いだからそばにいて
その日の帰り道
「ちょっと来いよ」
私は誰か分からず、戸惑った。
「な、んですか?」
引っ張られて連れて行かれた私はそう聞く。
するとその人は急に大人しくなった。
背中向きのため、顔は見えない。
「桜」
表向きになったとき、初めて顔が見えた。
「好きだ」
「…あの、誰ですか?」
私は気になって聞いた。
「…っ!………少しは名前覚えたら?…俺は相沢圭」
「け、い…?」
私はびっくりした。
圭は中学の元彼だった。
「桜、好きだ。俺とやり直してほしい」
「ごめ、ん、なさ…」
私の目から涙が溢れた。
圭と付き合ったのは親がいない寂しさと奏に会えない苦しさを消すためだったから。
けれど、今は…
「…いつ奏が帰ってきてもいいように、待ってるから…」
そう、それこそが私の本音だから…。
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