エリート弁護士は独占愛を刻み込む

恭吾さんが穏やかな顔で言うと、学は「お邪魔します」と礼儀正しく靴を揃えて中に入る。
恭吾さんが弟をリビングに案内すれば、学は窓から見える夜景を見て感嘆の声をあげた。
「うわー。この夜景凄いな。東京タワーがこんな近くで見られるなんて思わなかった」
弟が夜景に見惚れている間に恭吾さんは私に目配せする。
それは私の寝室の荷物を恭吾さんの寝室に少し移動させろとの合図。
恭吾さんの家にはゲストルームがひとつしかない。
つまり私が使っている寝室がそのゲストルーム。
私が移動しないと、今夜学はリビングのソファで寝る羽目になる。
それに、私と恭吾さんは弟の前では恋人という設定なのだから、別々の部屋で寝ているのは不自然だ。
恭吾さんの寝室で寝ることにごねていたら、彼に『それが嫌なら真実を弟くんに伝えればいい』と言われて、結局嘘をつく方を選んでしまった。
弱い私。