エリート弁護士は独占愛を刻み込む
恭吾さんは自分の寝室で寝るくらいなら、私は学に正直に退職のことを話すと思ったに違いない。
彼は私にチャンスをくれたのにね。
でも……窃盗犯だと会社の人に思われて解雇させられたなんて……そんな不名誉なこと、家族には知られたくない。
母は私が高校生の時に癌になり手術を受けた。幸い治療の効果もあって今は元気で再発もしていない。
今は幸せな家族を私のことで悩ませたくないのだ。
あんなこと……なかったことにしたい。
恭吾さんに向かってコクッと頷いて自分の寝室に行くと、私が愛用している目覚まし時計やメイク道具、雑誌などを恭吾さんの寝室に移し、ベッドのシーツを変え、バスルームに行ってお風呂を沸かす。
「ふぅ〜、これでよし」
リビングに戻ると、恭吾さんと学がコーヒーを飲みながらソファでテレビを観ていた。
なんだか学がここにいるのが不思議。
「葵、学くんに俺の部屋着貸してあげて」
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