エリート弁護士は独占愛を刻み込む
学くんは俺の反応を探るように言葉を切った。
まあ、恋人といっても彼のような頭のキレるタイプの人間は信じないだろうな。
簡単に騙せる相手じゃない。
「茶番ね。恋人ではないけど、お互い一緒に住んでるし、異性として意識し始めたところだよ」
学くんをまっすぐに見据えて真実を伝えると、彼は静かな目で俺に尋ねた。
「恋人じゃないなら、どうして姉と同居することになったんですか?」
「最初は単純に葵を助けたくてうちに連れてきたんだ」
俺の返答に学くんは少し首を傾げた。
「葵を助ける?」
「いずれ葵が君に話すと思うけど、前の会社を突然辞めさせられて、どこにも行くあてがなかったからだよ。実家も頼りたくなかったみたいでね」
そう説明したら、学くんは小さく毒づいた。
「ああ。だから寮も追い出されたって訳か。葵のバカ。素直にうちに帰ってくればいいものを」
つくづく葵は家族に愛されてると思った。
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