エリート弁護士は独占愛を刻み込む
だから、晶が葵にメイクをしているのを見ただけで心がモヤッとしたのか。
それは……嫉妬。
「そうだね」
認めてしまえば気持ちは晴れやかで、横で寝ている葵がより愛おしく感じた。
「恭吾さんならもっとゴージャスな女性を選べるのにな」
学くんは俺をまじまじと見て意外そうに言う。
「そういうのは一緒にいても疲れるだけだよ。葵の良さは君たち家族が一番よく知ってると思うけど?」
俺の指摘に彼は少し照れ臭そうにポリポリと頭をかいた。
「口うるさくて、どっか抜けてて、やたら正義感が強くて強情ですけど……面倒見のいい、優しい姉です」
「言ってることよーくわかるよ」
学くんの言葉ににこやかに頷くと、彼は続けた。
「母親が癌で闘病してた時、葵が家事を全部やっていたんです。今は母は元気にしていて休みになると父と温泉旅行に行ってますけど。でも、あの時はお弁当も葵が毎朝五時に起きて作ってくれて……。顔を合わせれば口喧嘩ばっかしますけど、葵には……姉さんには感謝しています」
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