エリート弁護士は独占愛を刻み込む
その話は初めて聞く話で、本当に葵は気立てがよくて優しい女の子だと思った。
「学くんはお母さんのこともあって医者になりたいと思ったの?」
「いえ、小学生の頃、俺が川に落ちそうになった時葵が助けてくれたんですよ。でも、代わりに葵が川に落ちて溺れて……。救助された時は意識がなくて、ERの先生が葵を救ってくれたんです。俺はただ見てるしか出来なかったから、いつか医者になってやるって思って」
彼はなにもできない自分が嫌だったのだろう。
その気持ちは俺にもよくわかる。
クライアントのお嬢さんがマンションから落ちるのをただ見てるしかなかったから。
「そんなことがあったんだ。君が医者を目指すきっかけがその事故だって葵は知ってる?」
「いいえ。恥ずかしいから言ってないですけど、葵が結婚したら言ってやろうかな」
彼の声はどこか楽しげだ。
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