エリート弁護士は独占愛を刻み込む
なにも考えずに彼に抱きついた。
「大丈夫だよ、これは夢だよ」
そう何度も恭吾さんに声をかけ、暴れる彼の腕を押さえつける。
「恭吾さん、起きて!」
半ば懇願するように声を上げたら、彼が目を開けて私を見た。
「……夢?……葵?」
まだ頭がはっきりしていないのか、目はトロントしていて夢か現か判断がつかない様子。
「うん、葵だよ。怖い夢でも見た?」
恭吾さんの目を見て返事をしたら、彼とやっと目が合った。
「ああ、ごめん。葵まで起こしちゃったみたいだね」
彼はゆっくり起き上がるが、その額には汗が滲んでいる。
「どんな夢だったの?」
恭吾さんの額の汗を手で拭いながら尋ねたら、彼はその瞳に暗い影を落とした。
「……顔見知りの女の子が死んじゃう夢」
ポツリと呟く彼を見て胸が苦しくなった。
「それって……恭吾さんのクライアントのお嬢さん?」
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