エリート弁護士は独占愛を刻み込む
その無邪気な笑顔を見て脱力する。
『華子さん、今日はちょっと無理ですよ』
暗に忙しいと祖母に伝えるが、彼女はお構いなしだ。
祖母を『華子さん』と呼ぶのは、俺の親族が皆そう呼ぶから。
一見か弱い老人に見えるが、政財界ではゴットマダムとして名を馳せている。
彼女は歴史の教科書にも載っている総理大臣の娘で、夫はもう他界したが財界のドンで日本最大の総合商社の社長だった。
祖母は歴代の総理のご意見番も務め、大物政治家でさえ、彼女に頭が上がらない。
『わかっていますよ。長くはかからないわ。お弁当を食べるだけ。久々にこのメンバーで食べられて嬉しいの』
『約束した覚えはありませんが』
冷ややかに返せば、晶がやんわりと俺を注意した。
『もう恭ちゃん、身内に冷たくしちゃうだめよ』
『そうですよ。老人には優しくね』
祖母は楽しそうに晶に同調し、涼太は同情の眼差しを俺に向けた。
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