エリート弁護士は独占愛を刻み込む
『諦めろ、恭吾。この中で華子さんに勝てる人はいない』
ハーと盛大な溜め息をついて席につく。
テーブルには祖母のお気に入りの高級料亭『蝶華亭』の幕の内弁当が並んでいる。
彼女が気まぐれでここにきたわけではないのはわかっている。
祖母は俺のことを親父よりも知っていて、クライアントのお嬢さんが自殺した事件のことも知っている。
今日が死んだあの子の命日だから祖母は俺を気遣ってやって来たのだ。
俺の心配をするよりもっと自分のことを気にかけてほしい。
祖母は去年肺炎になり一ヶ月ほど入院していた。
そのせいか以前に比べると身体が細っそりしたように思える。
『恭吾くんは午後外出するようだし、いただきましょうか』
祖母は優しく俺たちに声をかける。
彼女が俺のスケジュールを知っていても驚かない。
恐らく晶か涼太あたりに俺の予定を確認したのだろう。
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