エリート弁護士は独占愛を刻み込む

彼女がこういう行動に出るのは俺の家族のことを思ってのこと。
俺の親父は日本最大の総合商社『黒瀬』の社長をしている。
俺には兄がいて、父はことあるごとに俺たち兄弟を比較し、勉強もスポーツも兄よりできた俺に跡を継がせようとした。
俺は次男に生まれたから親父の会社を継ぐ気は全くなく父に反発して家を出たのだが、兄は俺を恨み、お互い成人してからはまともに口を聞いていない。
俺の家族関係は崩壊していて、祖母はそれを気にかけているのだろう。
『華子さんはまだまだ長生きしますよ』
フッと微笑して言えば、祖母は悪戯っぽく笑った。
『だったらひ孫の顔を見たいわねえ』
早く結婚しろっていう催促か。
『でも、恭吾くんが幸せでいるのが私は一番嬉しいわ。なにがあっても私はあなたの味方ですからね』
祖母は俺を見て微笑むが、その目はとても温かい。
今日は俺にとって一年で一番辛い日だから、励ましてくれているんだと思う。