エリート弁護士は独占愛を刻み込む
晶の話では葵は元々総務部にいて、秘書室の社員がひとり産休に入り、今年の春に異動になったとか。
それまで社長秘書に逆らう人間はいなかったのだが、葵は彼女が会社の金を私的に利用していたり、上司を顎で使っているのを見て注意したらしい。
まあ、葵の性格なら見過ごせないだろうな。
『なるほど。葵がその女帝の逆鱗に触れて辞めさせられたってことか』
晶の説明にそう相槌を打つが、彼は表情を少し険しくして付け加えた。
『ただ辞めさせられただけじゃないの。自分の財布を葵ちゃんのバッグに入れて、財布がないって大騒ぎしたそうよ。その場で他の秘書の持ち物が一斉に調べられて、葵ちゃんのバッグの中に社長秘書の財布があるのを発見。それで上司に窃盗犯扱いされて解雇されたって訳』
これほど詳しく事情知っているのは、人に頼んで調査させたのではなく、晶が丸岩の秘書に近づいて直接話を聞き出したから。
葵は社長秘書の怒りを買って毎日のように嫌がらせを受けていたが、決して屈しなかったそうだ。
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