エリート弁護士は独占愛を刻み込む
そこで、社長秘書は葵を窃盗犯に仕立て上げ、解雇させるという暴挙に出た。
『それは酷いな』
晶の話を聞いていた涼太が吐き捨てるように呟く。
俺も声には出さなかったが腹わたが煮えくり返っていた。
怒りで強く唇を噛んだせいか、唇が切れて血の味がする。
相手は警察に被害届けを出していないから虚偽告訴罪は成立しない。
あらぬ罪を着せられ、葵はどんなに辛かっただろう。
だから最初に会った時彼女はあんなにも憔悴していたのだ。
『この件は俺に任せてほしい。本人の意思も確認したいから』
晶と涼太にそう告げた時、葵が会議室に入ってきて……。
ノックの音がしなかったので少し驚いたが、すぐに笑顔を作って彼女に声をかけた。
『ランチちゃんと食べて来た?』
葵に今の話を知られるのはマズイ。
俺の質問に彼女は少し硬い表情で答える。
『はい。萌音ちゃんとイタリアンを。あの……カップを下げにきたんですけど、打合せ中でした?』
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