エリート弁護士は独占愛を刻み込む

『いや、大丈夫だよ。ただ雑談してただけ』
俺が笑顔で否定すると、晶と涼太は席を立った。
彼らも葵に彼女の話をしていたことを悟られたくなかったからだと思う。
彼らが会議室を出て行った後、彼女を見てなんとも言えない気持ちになった。
葵も俺にあの時会わなかったら本当に自殺していたかもしれない。
亡くなったクライアントの娘さんの顔も脳裏に浮かんできて……。
息が止まりそうなほど胸が苦しかった。
でも、葵の温かさに慰められ、会議室で彼女と別れると、クライアントのお嬢様さんの墓参りをしに八王子に向かった。
それは、今までしてきたようにただ彼女の死を詫びるためでなく、彼女を救えなかった分も葵を大切にする決意をするため。
前に進まなければいけない。
そう強く願ったものの、俺がかかった呪縛は強くて、
その日帰宅してベッドに入ると悪夢にうなされた。