エリート弁護士は独占愛を刻み込む
いつも恭吾さんに対して怒ってばかりだけど、彼にはとても感謝している。
宝生法律事務所のあるビルを見上げ、クスッと笑みを溢した。
「頼もしいけど、変な人」
前の会社にはいなかったな、あんな人。
会って間もない私に財布を預けようとするなんてどういう神経してるんだか。
元彼だってそんなことしなかった。
単に無頓着なだけ。
そう思うんだけど、『葵を信用してるから』って言われた時は嘘でも内心嬉しかった。
恭吾さんにしてみれば、私を助けたのはただの気まぐれだったのかもしれない。
たまたま雑務をこなす人間が欲しかっただけなんだろうけど、それでも彼が私に居場所を与えてくれたことに変わりはない。
だったら……。
「少しくらいは我が儘聞いてあげないとね」
フッと笑って歩き出すと、郵便局とデパートに立ち寄り、ボスの用事を済ませる。
エトワールは案の定混んでいて、チョコを買うのに四十分も並んでしまった。
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