エリート弁護士は独占愛を刻み込む

正一さんの存在を忘れていて変な声を出す私。
だが、恭吾さんはいつもの穏やかな顔で「おはよう」と返して、スッと自然な感じで私と手を離すと、自分のデスクに座る。
私も「おはようございます」と挨拶して、自分の席に座った。
絶対正一さんにもさっきの廊下での会話が聞こえていたはず。
彼もきっと私と恭吾さんの関係が変わったことに気づいたに違いない。
だって、いつもなら『今日は一緒に出勤してきたんですね』って言いそうなのに、なにも突っ込んでこないし、私と目を合わせてくれないんだもん。
あ〜、それもこれも恭吾さんのせいだよ。
一緒にシャワーなんて浴びなかったら、余裕でオフィスに着いたのに。
お陰で今日もノーメイクでメガネだよ。
普段と変わらぬ態度でクライアントに電話をしている彼に恨みがましい視線を向ける。
なにか書類に目を通しながらアドバイスしている恭吾さん。