エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「クライアントの要望だ」
……本当に晶さん?
女装の時はもっとペチャクチャ喋るのに……。
ここを早く出ろ……と頭の中の声が警鐘を鳴らす。
だが、身体が麻痺したような感覚に陥り、椅子から立ち上がることが出来なかった。
「今日も俺がメイクをしようか?」
どこか面白そうに笑う目が私を捕らえ、ゴクッと息をのみ込む。
『いいです』と言いたいのに、言葉が出ない。
晶さんはメイクボックスを開けて前回やったのと同じように化粧水、乳液……ファンデーションと私の顔に無言で化粧をしていく。
そして仕上げに真っ赤なルージュを塗ると、悪魔のように妖しく微笑んだ。
「このルージュ、『アンジュ』の新作で色落ちしないんだ。本当かどうか試してみるか?」
その言葉にゾクッと悪寒がして、晶さんが私の顎を掴んだ。
咄嗟にキスされる!
そう危険を察知したが、身体が何か魔法でもかけられたかのように動かない。
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