エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「じょ……冗談ですよね?」
ハハッと笑ってその場の空気を変えようとするが、うまく笑えず、おまけに晶さんの目が漆黒に染まる。
「この姿の時は冗談は言わない」
嫌な汗がスーッと背中を流れた。
わー、ぎゃー、怖い、怖い〜!
マジで襲われる。
誰か助けて〜!誰か……。
必死の思いで「恭吾さん〜!」と叫ぶと同時に、そばのドアが勢いよく開いて、誰かが私を背後から抱き寄せた。
「晶、人のものに手を出すな。次同じことやったらその口に口紅突っ込むよ」
その声は恭吾さんだった。
落ち着いた声だったけど、殺気に満ちているように聞こえたのは私だけではなかったようで、晶さんはハハッと苦笑いする。
「お前、本気で怒るなよ。怖い」
「晶が調子に乗って葵に手を出そうとしたからだよ」
恭吾さんが晶さんをやんわりと責めると、晶さんは自嘲めいた笑みを浮かべた。
「誘惑したが失敗した。普通の女は俺が口説けば誰でも落ちるが、葵は違うらしい」
「お前のは誘惑じゃなくて威圧してるんだよ。葵がお前の豹変ぶりにビクビクしてるのわからない?」
恭吾さんの胸にしがみついて震える私を見て、晶さんは頬を緩めた。
その顔はいつもの晶さん。
< 189 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop