エリート弁護士は独占愛を刻み込む
疲れた顔で言う正一さん。
まあ、机の散らかり具合から言って、大変なのは見てわかる。
「まだ新参者なので、ネコの手くらいしか働けないですけどね」
「そんなことないよ。前も秘書してただけあって、気が利くし、恭吾さんも僕も助かってる。前は大手電気機器メーカーにいたんだって?凄いね」
正一さんの話に一瞬顔が強張った。
「凄くなんてないです。ただ大きな会社ってだけで……。正一さんはお昼食べたんですか?」
あまり前の会社のことには触れられたくなくて話題を変える。
「ああ。『笑福亭』のカツ丼食べてきたんだ」
「明日の裁判のゲン担ぎですか?」
フフッと笑えば、彼はにこやかに返す。
「まあ、そんなとこ」
「私も大学受験の日はとんかつ食べましたよ。あ〜、あの頃は若かったなあ」
昔を懐かしむように言うと、彼は少し呆れた顔をした。
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