エリート弁護士は独占愛を刻み込む
騒ぎを聞きつけた総務部長が秘書室にやって来て社食秘書から事情を聞くと、部長は表情を険しくして私を見据えた。
『私は彼女の財布なんか盗んでません!』
そう何度も総務部長に訴えたのに、部長は聞く耳を持たない。
彼も他の秘書同様、罪人を見るような目で私を見ていて愕然とした。
誰も私を信じない。
話もまともに聞いてくれない。
私の味方はどこにもいないのだ。
総務部長は他の役員と私のことを話し合うことも、会議を開いて議論することもなく、その場で私は解雇された。
『朝比奈さん、君のような人はうちの社員として認められない。今日付けで退職してもらう』
私には死刑宣告に思えたその言葉を聞いて、天宮さんはうっすら口角を上げていた。
その表情を見て確信した。
私は彼女にはめられたのだ。
悲しさ、苦しさ、悔しさ、それに絶望ーー。
あの時感じた負の感情が甦ってくる。
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