エリート弁護士は独占愛を刻み込む
彼はいつからそこにいたのだろう?
私と天宮さんの話、全部聞かれた?
……どうしよう。
頭がパニックになる。
彼には私がどうして前の会社を首になったか詳しくは説明していない。
前の会社の人は誰も私の言うことなんて信じてくれなかった。
だったら彼も……私が天宮さんの財布を盗んだと思うんじゃあ……。
絶望が私を襲う。
暗い闇が私を侵食し始めて……。
「私は……天宮さんの財布を盗んでいない!」
半狂乱になりながらそう叫んで目の前にあるエレベーターに乗り込み、一階のボタンを押し、『閉』ボタンを連打した。
ここから逃げることしか考えなかった。
「早く閉まって!お願い!」
恭吾さんにまで信じてもらえなかったら、私はもう誰も信じられなくなる。
それが怖かった。
「葵!」
恭吾さんが私の名前を呼んで私を追ってくるが、ギリギリのにところでエレベーターの扉がバタンと閉まった。
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