エリート弁護士は独占愛を刻み込む
肩を上下させて大きく息をしながら壁にもたれかかる。
まさか天宮さんに会うなんて思わなかった。
もう私の人生から消したはずなのに……。
その上、恭吾さんに解雇された時の話を聞かれたかもしれない。
今度こそ私はお終いだ。
もう彼のそばにはいられない。
エレベーターが一階に着くと、走って店を出る。
背後から「葵、待って!」と恭吾さんが追ってきたけど、構わず逃げた。
外はかなり吹雪いていて視界が悪い。
でも、止まっちゃダメだ。
雪が顔にかかっても、足が痛くても走り続ける。
吐く息が白い。
息も苦しい。
「葵〜!」
恭吾さんの声がまだ聞こえて胸が張り裂けそうだった。
お願いだからもう放っておいて!
私をひとりにして!
走りながらそう願ったのに、彼の足音が段々近づいてくる。
このままだと彼に追いつかれる。
止まるな。
逃げるんだ。
足が絡まってコケそうになったけど、なんとか堪える。

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