エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「この期に及んで何を言ってるのかしら?秘書室のみんなが私の財布があなたのバッグの中にあるのを見たのよ。嘘をつくなんて見苦しい。私が警察に届けていたら、あなた、逮捕されていたんじゃないかしら?」
キャメル色のコートを着た女性は晶が話していた葵の前の会社の社長秘書だと思った。
葵はひどく取り乱した様子で叫んだ。
「私は盗んでなんかいないわ!」
その悲痛な声に胸が痛くなる。
今にも倒れそうな顔をしているし、早く止めないと。
「葵?どうしたの?」
ふたりの間に割って入るように声をかける。
すると、葵は俺の存在にやっと気づいたのか、目を大きく見開いた。
「私は……天宮さんの財布を盗んでいない!」
肩で大きく息をしながら葵は俺に向かって訴えるように声を上げると、目の前のエレベーターに飛び込む。
気が動転しているように見えた。
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