エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「葵!」
彼女の名を呼んで慌てて俺もエレベーターに乗り込もうとするが、無情にも扉は俺の目の前で閉まった。
「くそっ!」
ドンと扉を叩いて悪態をつく。
そばにいたキャメル色のコートの女が驚いた顔で俺を見ていたが気にしなかった。
今は他人なんてどうでもいい。
すぐに葵を捕まえないと……。
カフェの前にある階段を駆け下りて一階まで一気に行く。
必死に彼女を追いながら頭の中で考えた。
一瞬社長秘書の天宮という女から逃げたように思えたが、あれは違う。
葵は俺から逃げたんだ。
なぜ逃げた?
もしかして、葵が財布を盗んだとかいう話を俺が信じると思ったのだろうか?
だから彼女は俺に向かって『私は……天宮さんの財布を盗んでいない!』と叫んだ?
一階に着いてエレベーターを確認すると、もう二階に上がっていた。
葵は店を出ているに違いない。
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