エリート弁護士は独占愛を刻み込む
ゼーハー息を吐きながら、彼女を俺の胸に抱き寄せて強く抱きしめる。
「いや、離して!」
葵が俺の胸を叩いて暴れるが、優しく声をかけた。
「葵……落ち着いて」
「いや!」
半狂乱の葵は手をバタバタさせた。
「ちゃんと俺を見て!」
彼女の腕を押さえつける。
「離して!」
涙を流し、髪を振り乱して抵抗する彼女。
息遣いも激しい。
そんなやり取りを何度繰り返しただろう。
彼女も疲れてきて、抵抗する力が弱くなった。
「葵」
彼女の顎をクイッと掴んで目を合わせる。
葵は大人しくなったが、その瞳は恐怖で震えているように思えた。
どうすれば彼女を落ち着かせることができる?
「葵、俺は敵じゃないよ」
彼女の目を見てはっきりと告げる。
葵がまだ俺を信じていない気がしたのだ。
「恭吾……さ……ん?」
葵がまじまじと俺を見たので、にっこり微笑みながら彼女の涙を指で拭った。
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