エリート弁護士は独占愛を刻み込む
だが、その時ギュルル〜と葵のお腹が盛大に鳴って、ついまたククッと笑ってしまう。
さっきまで緊迫した状況なのに、一気に脱力して葵に寄りかかる。
すると、彼女が恥ずかしがりながら怒って俺の腕を少しつねった。
「きょ……恭吾さん、笑いすぎ!」
「ごめん。葵は一回に食べる量が少ないからお腹が空くんじゃない?今日の朝だってオフィスでお握り一個しか食べなかったよね?携帯食用意したら?」
謝りながらそんなアドバイスをすると、彼女はじっとりと俺を見た。
「今お腹が鳴ったのはいっぱい走ったからです!」
「はいはい。お腹が空くと葵は機嫌が悪くなるし、うちに帰ろう」
抱擁を解くと彼女の手を引き、通りでタクシーを拾う。
二十分ほどで自宅マンションに着いて玄関に入ると、葵が突然「あっ!」と声を上げた。
「どうしたの?」
靴を脱ぎながら葵に目をやれば、彼女は両手で頬を押さえて落ち込んでいる。
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