エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「せっかくここまで来たんですもん。絶対にお参りして帰りますよ」
こういうところは結構頑固だ。
「了解。じゃあ、ここで並んで待ってて」
列を抜けて近くの店で甘酒を買い、葵の元に戻る。
「はい、これ」
甘酒を手渡すと、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「わーい、甘酒〜。恭吾さん、ありがとう〜」
フーフーしながら甘酒を口に運ぶ。
火傷しそうなほど熱かったが、飲むと身体がじわじわとあったまる。
「たまには甘酒もいいね。ここで酔って寝ないでよ」
俺が笑って注意したら、葵もクスッと笑みを溢しながら否定した。
「さすがに甘酒では寝ないですよ」
その後すぐに除夜の鐘が鳴り、葵を見つめて言った。
「明けましておめでとう。今年もよろしくね、葵」
「明けましておめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします」
葵も俺を見つめ返し、とびきりの笑顔で挨拶すると、俺にここに来た理由を尋ねた。
「あのう、恭吾さん、自宅マンションの近くに神社があるのになぜ浅草まで来たんですか?」
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