エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「なにか手伝おうか?」
彼に声をかけられ、「カセットコンロ、テーブルに準備して!あと、お箸と小皿を並べてください」と早口で頼んだ。
「了解」と彼はにこやかに返事をし、鼻歌を歌いながら用意する。
「なんかすごくご機嫌ですね」
「うちで鍋って初めてだからテンションあがる。ひとり暮らしは気楽だけど、食事がわびしいからね」
「ああ、そうでしょうね」
私もひとり暮らしの時はスーパーのお惣菜買って適当に済ませてたしねえ。
鍋をコンロにセットし、たらの切り身や、エビ、豆腐、くず、白菜等の食材を入れて煮込む。
六人がけの長テーブル。
普段ふたりだけで使っているとあまりに大きく感じるけど、鍋をやるには広く使えて便利。
皿を並べ終えた恭吾さんが椅子に座り、頰杖をついて私に目を向ける。
「葵って料理とか手際いいね」
「それは凝った料理は作らないからですよ。母にもっと習っておけばよかったなあ。お味噌汁とか自分で作っても全然美味しく感じないんですよね。お袋の味にはまだ遠いって感じ」
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