エリート弁護士は独占愛を刻み込む
不敵の笑みを浮かべる彼。
この顔、勝つ気満々だ。
「料理なんてしないくせになに言ってるんですか」
呆れ顔で返すが、内心ちょっと感心していた。
なにも考えてないように見えてちゃんと部下のことも考えてるんだ。
どうやらうちの事務所はブラック企業ではないらしい。
前の会社の上司とは違うな。
そんなことを思っていたら、彼は急に真剣な表情になった。
「ところで、さっきの前の会社解雇された話、葵からちゃんとご両親に伝えておいた方がいいよ。住所変わったことも知らせてないんだろう?」
その話題に罪悪感を覚えてチクッと胸が痛む。
「……はい」
早く言わないといけないと自分でもわかっている。
でも、解雇された経緯を伝えたら、絶対に親は心配する。
余計な心配はかけたくないし、退職のことを知ったら群馬に帰って来いって言われるだろう。
ただでさえ年末実家に帰ると、年が二十七ということもあって親は早く結婚しろと煩い。
群馬に逃げ帰って、親が選んだ相手と結婚なんて嫌よ。
< 38 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop