エリート弁護士は独占愛を刻み込む

その様子を見て咄嗟に彼女の腕を掴んだ。
妙な胸騒ぎがしたんだ。
この子もあの子のように自殺するんじゃあ……。
『ちょっと待った。そっちは歓楽街だよ』
『……別にどこでもいい』
なんの感情もこもっていない声が俺の耳に届く。
『放っておいて。もう子供じゃないし、大丈夫だから』
そんな青白い顔で『大丈夫』と言われても信じられるわけがない。
屈んで葵と目を合わせようとしたら、彼女の目から涙が溢れた。
『だったらなぜ泣く？』
葵の頰に触れて問えば、彼女は顔を上げて俺を見た。
『泣く？』
葵の目は涙で溢れているのに、彼女は不思議そうに俺に聞き返す。
まるで小さな子供だ。
そんな彼女を見て、自分が守らなければ……と強く思った。
『泣いているのも気づかないなんて馬鹿だな』
半ば呆れるように言って、葵を抱き寄せて胸を貸す。
その身体があまりに冷たくて驚いた。
彼女は子供のように声をあげて泣く。
『ずっと……頑張ってきたのに……。私はなにも悪くないのに……。なのに……辞めさせられるなんて悔しい。……悔しいよ』