エリート弁護士は独占愛を刻み込む
そんな葵を見てちょっと安心した。
さっきまでは生気がなくて、今にも死んでしまいそうな気がしたけど今は違う。
俺に怒りをぶつけている。
よくはわからないが、不当に解雇され、ショックだったんだろうな。
だが、仕事がなくなっても、住むところを失っても、生きてさえいればいずれ見つかる。
『俺が仕事と住むところを与えてあげるよ。だから、もう泣くな』
そう言ってもまた葵は泣いて、ひとりで帰すなんて出来なくてうちに連れて来た。
泣いて化粧が落ちたせいで、彼女の顔は目の周りが黒くなって酷い状態になっていた。
男の気ままなひとり暮らし。
化粧品なんてうちにはない。
『ちょっと座って待ってて』
葵をリビングのソファに座らせ、近くのコンビニまで走り、トラベル用のお化粧セットを購入して家に戻る。
『これでメイク落としておいで』
遠回しに化粧が凄いことになっていることを伝えたつもりなのだが、ビニールのケースに入った化粧品を差し出しても、彼女は泣き疲れたのか放心した様子で俺を見ようともしない。
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